シンクの災難な日常
朝。シンクはいつも早起きだ。分かる人には分かるだろうが、実年齢2歳なので、子ども特有の早起きさだ。そのことで、何か言う人はいないだろうが・・・。
そして、シンクはこれと言ってやることがないので、仕事を早めに終わらせる。「烈風のシンク」というその異名の通り、シンクの仕事の早さはピカイチだ。
しかし、そのせいで色々頼まれることがある。
「シンク、すまないが、アッシュとディストとアリエッタの溜まっている仕事をしていてくれないか?」
「またぁ?ラルゴがやればいいじゃん」
「俺も仕事があるんだ。シンクはもう終わったのだろう?」
アリエッタのやる仕事は少ない。何故なら元から出来ないのが目に見えている。しかし、アッシュとディストは違う。普段、といか彼らをよく知らない人は仕事が出来るのだと思い込んでる。
しかし、実際は違う。アッシュはというと、六神将の中でも一際別行動が多く、ダアトにいないことも多々ある。それがだいたいナタリアを追ってだということは六神将の中では有名だ。しかし、誰も止めない。否、止められない。彼はナタリアのことを気にしだすと、手が動かなくなることがしばしばだ。役立たずである。
また、ディストはというと、これもまた研究やら復讐やら何か知らないが彼は、自室に篭ることが多い。扉を叩こうが、破壊しようが出ようとしない。しかも、膝を抱えて、落ち込んでいることもあるという、仕事を頼みづらい状況下にいることもある。
そんなこんなで、仕事を早く終わらせてしまうシンクは3人、いや2人のせいで仕事が増えるのだ。
(いつかマジでぶっ飛ばす・・・)
そう思わずにはいられないシンクだった。
そんなこんなでシンクの午前中は過ぎていく・・・。
昼。この日はアリエッタと外での任務だった。
「シンク・・・疲れませんか?」
「そうだね。どこかの誰かさんが獣になんか乗って移動するから、僕が走って移動しないといけないからね」
「アリエッタのお友達にシンクも乗ったらいいです」
「やだね。そいつ、この前ヴァンを乗せてたじゃん」
「それがどうかしたんですか?」
シンクはヴァンのことが嫌いだった。真面目な理由も確かにあるが、生理的に受け付けないらしい。
「とにかく僕は乗らないからね」
「シンクは意地っ張りです・・・」
「いちいちうるさいよ」
どうしてもヴァンが乗ったやつは嫌らしい。
「仕方ないから、アリエッタも一緒に歩いてあげる・・・です。アリエッタはお姉さんだから」
「どこがだよ。全然子どもじゃん」
「年下のシンクに言われたくない、です」
アリエッタはシンクの実年齢を知らないが、16歳と14歳・・・アリエッタの方が結局は年上になる。
それを出されるとシンクは何も言えない。
「それに、1人より2人の方が、シンクも寂しくない・・・です」
「寂しいなんて一言も言ってないんだけど」
「それに楽しい・・・です」
お話出来るから、とアリエッタは言う。
何が楽しいのやら、とシンクは思うが、アリエッタが楽しそうにしているので、たまには付き合ってやるかとも思った。
こうして、疲れはしたが平和な昼は終わった。
夜。シンクの最も嫌う時間がやってくる。何故なら・・・。
「シーンークーーvV」
導師イオンに纏わり付かれるいや、憑かれるからだ。
「げっ」
「今、この瞬間が待ち遠しくて、夜も眠れなかったんですよ〜」
「じゃあ、早く寝なよ。もう用事は済んだだろ」
「いえ!シンクと仲良くなるという用事はまだ済んでません」
「その用事は一生済まないだろうね」
「そうですか、シンク。一生僕と一緒にいたいですか。分かりました。じゃあ僕はシンクのお婿さんになり・・・」
「ならなくていいから」
「シンクがお婿さんがいいですか?仕方ないですね、じゃあ僕がシンクのお嫁さんに・・・」
「絶対貰わないからなっ!!」
「もう、シンクは我が侭ですね。でも、そんな我が侭なあなたも好きですよv」
シンクは背筋に寒いものを感じた。
(誰でもいい・・・誰かこいつをどうにかしてくれ)
そんなシンクに1つの助け舟が・・・。
「イオン様〜、大詠師モースが呼んでます〜」
アニスがやってきた。いや、随分前からいた。時間を気にして、限界まで待っていたのだとシンクは予想する。
「そうですか・・・いつか殺す」
「あんた、それ聞こえてるからね」
「ではシンク、また明日vV」
「もう2度と来るな!!」
今回ばかりはモースに感謝している。シンクだった。
そしてまたシンクの災難な日常は続く・・・。